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2019年10月17日 09時30分 配信

ファインファイバーと製剤で形成する膜の肌への効果

花王株式会社
化学
2019年10月17日

花王株式会社

ファインファイバーと製剤で形成する膜の
角層タンパク質発現挙動および肌への効果

 花王株式会社(社長・澤田道隆)は、直径がサブミクロンの極細繊維を肌に直接噴きつけることで、軽く、やわらかく、自然な積層型極薄膜を肌表面につくる「ファインファイバー(Fine Fiber)技術」を、2018年に発表しました。このたび、花王のスキンケア研究所、解析科学研究所は、この技術と水分蒸散制御製剤を併用して形成する膜の透湿度※1に着目。肌表面の水分蒸散を制御することが、健全な角層形成に必要な多くのタンパク質の発現、および肌状態と関係することを見いだしました。
 なお、本研究内容は「日本香粧品学会第44回年会(2019/6/28-29、東京都)」「日本プロテオーム学会2019年大会(2019/7/24-27、宮崎県)」、「第25回 IFSCC ミラノ大会(2019/9/30-10/2、イタリア)」にて発表しました。
※1 布などが水蒸気を通す度合い。透湿度が高い=水蒸気を通しやすい




背景
 肌の最外層にある角層には、皮膚の恒常性を維持するために重要なバリア機能があり、外的刺激物質の体内への侵入を防いだり、水分蒸散を抑えたりする働きがあります。しかし、環境や加齢などの影響で、角層バリア機能が低下し、その結果、見た目の美しさが損なわれることはめずらしくありません。花王は、角層機能を補うことをめざし研究を行なっていますが、従来の製剤は、均一性や持続性といった面で課題もありました。
 ファインファイバー技術は、専用のポリマー溶液を小型の専用装置から肌に直接噴射し、肌表面に極細繊維からなる積層型極薄膜を形成する技術です。直径1μm以下の細さの繊維が折り重なってできるこの極薄膜は、軽く、やわらかいだけでなく、極細繊維による高い毛管力※2を有するのが特長です。花王は、このファインファイバー膜と液状の製剤を併用すると、高い毛管力により、製剤が膜全体に速やかに均一に広がり、膜の中でしっかりと保持されるという性能を見いだしています。
※2 物体内の狭い隙間が液体を吸い込む力

ファインファイバーと製剤が形成する膜の透湿度特性
 昨今、創傷治療の場面では、湿潤環境を人工的に作り出し、体が持っている「自己治癒力」を発揮させて傷を治す「湿潤療法(モイストヒーリング)」が広く用いられています。花王は、この知見に着想を得て、肌自身の力で肌の状態を良好にする機能を高めるには、肌表面の水分環境を最適な状態に整えることが必要ではないかと考えました。ファインファイバーが有する高い毛管力を応用すると、製剤が形成する膜の均一性や持続性が向上します。さらに肌の水分蒸散を制御する可能性もあると考え、ファインファイバーと製剤との併用に着目。肌の水分蒸散を制御するという視点で、従来の製剤のみ、ファインファイバー膜のみ、両者を併用した膜、それぞれの透湿度特性を確認しました(図1)。
 従来の製剤で形成される膜は、微細な隙間が存在するため透湿度が高く、水分蒸散の制御には限界があります。また、ファインファイバー膜単独でも、極細繊維の積層膜に隙間が存在するため、透湿度のレベルは従来の製剤による膜と大きな違いがありません。
 一方、ファインファイバー膜と製剤を併用すると、ファインファイバーの毛管力により製剤が均一に広がり、微細な隙間が埋められるため、従来の製剤膜よりも透湿度が低くなり、肌表面の水分蒸散を抑えられることがわかりました。検討を重ねた結果、この透湿度は、組み合わせる製剤の組成により制御できることも確認しました。さらに、ファインファイバー膜と製剤を併用した膜は、従来の製剤膜に比べ高い密着力があるため、透湿度制御による水分蒸散抑制効果が持続すると考えられます。


【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201910162169-O2-N7Espcy5

ファインファイバーと製剤が形成する膜の肌への効果
〈方法〉 
 乾燥肌、または乾燥意識のある30~40代の女性45名を2グループに分け、2週間の連用試験を行ないました。試験には、ファインファイバー膜の構造を壊すことなく、水分蒸散性をコントロールすることを目的とする製剤(水分蒸散制御製剤)を用い、この製剤のみを使用するグループと、この製剤を使用した後にファインファイバーを併用するグループを設定し、比較を行ないました。
 角層内部の様子をより短い期間での変化まで詳細に把握するため、質量分析を用いたプロテオーム解析法を応用した「時系列プロテオーム解析法」を独自に開発。使用開始前と連用後における245種の角層タンパク質の発現挙動を網羅的に解析しました。さらに、肌の水分量、肌表面の見た目の質感(明るさ、ツヤ)も観察しました。

〈結果〉
① 時系列プロテオーム解析法による評価~角層タンパク質の発現挙動
 使用開始前と連用7日後、14日後の角層内部のタンパク質種の発現状況を解析したところ、ファインファイバーと水分蒸散制御製剤を併用したグループは、製剤のみのグループに比べて、短期間で多くのタンパク質種の発現が増加していることが明らかになりました。
 なかでも、ファインファイバーと水分蒸散制御製剤を併用したグループは、使用開始前に対して連用7日後に、NMF(天然保湿因子)の原料の産生を促進するタンパク質(CAPN1、BLMH)が製剤のみよりも増加しました。また、連用7日目に対して14日後には、NMFの産生を促進するタンパク質(GGCT、HAL、ARG1)の増加が促進され、さらに肌のバリア機能に深く関与するラメラ顆粒※3の産生を促進するタンパク質(SBSN)も、特異的に増加することを確認しました(図2)。
※3 セラミドや肌の正常な代謝に必要な酵素を含む顆粒


【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201910162169-O3-o24s3lv9

② スキンケア効果
 肌の水分量は、ファインファイバーと水分蒸散制御製剤を併用したグループ、製剤のみを使用したグループいずれも、使用開始前に比べ、3日目以降で有意に上昇しました。一方、見た目の肌状態のうち、明るさ、ツヤについては、ファインファイバー膜と水分蒸散制御製剤を組み合わせて使用したグループが、製剤のみのグループよりも早く、3日目の時点で有意に変化することを確認しました(図3)。


【画像: https://kyodonewsprwire.jp/img/201910162169-O4-Akzo36dX

まとめ
 創傷治療の分野で活用される「湿潤療法(モイストヒーリング)」に着想を得て、ファインファイバーと水分蒸散制御製剤との併用について検討した結果、角層からの水分蒸散(透湿度)をコントロールできることがわかりました。さらに、その膜を肌に使用することにより、角層内で肌を良好な状態に導く複数のタンパク質種の発現が短期間で増加すること、および、乾燥した肌の見た目が早期に改善することが明らかになりました。
 このことから、ファインファイバー技術を応用することで、新しい切り口の商品を提案できる可能性があると考えます。今後は、さらに治療分野での応用も視野に入れ、世の中に貢献する技術の開発を進めていきます。






 







図1 透湿度の関係(イメージ)

図1 透湿度の関係(イメージ)

図2 角層内タンパク質の発現挙動の比較

図2 角層内タンパク質の発現挙動の比較

図3 使用による肌の明るさ、ツヤの変化の比較

図3 使用による肌の明るさ、ツヤの変化の比較

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